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【ネタバレ注意】『君の名は。』を見て溢れ出た感想と考察

※視聴直後にザーッととったメモです。普段はもうちょっと整理して、情報を取捨選択したりくっつけたり引っ張ったりゴリゴリ削ったりしてから一連の考察として日の目にさらすんですが、今回は未整理のまま出します。そうしたほうがいい作品だと思うので。

 

※あとマジでネタバレなしで見たほうが圧倒的に楽しめる作品なので、未見の人は今すぐブラウザを閉じたほうがいいと思います。自分が見るまでほとんどネタバレがなかった我がタイムラインのリテラシーの高さに感動したほどです。

 

※繰り返しますが、ネタバレなしで見たほうがいいですよ。忠告しましたからね。ね。 

 

【以下、『君の名は。』(新海誠監督・2016年)ネタバレしかない考察&感想】

 

・奥寺先輩が控えめにいって最高です。

・冒頭、美しい星空を切り裂き彗星が雲を突き抜けて地上に向かうシーンで始まり、クライマックスでまた落下シーンが描かれます。隕石として落下する彗星は大変な災厄ですが、「それ」がないと主人公の2人は出会わない。このことに運命を感じる仕掛けがニクい。たくさんの星の中から衝突する彗星が展開を暗示してるんですね。切ない。

・1200年周期で地球に近づく彗星は少なくとも3回落ちている。一度目は中心に口噛み酒を祀った祠のあるクレーター(だから祠に彗星の壁画がある≒2400年前でまだ文字が入っていない時代)、二度目が糸守湖を作り、三度目が今回。

・時代的には二度目の彗星落下時に「片割れどき」という方言が生まれたということか。

・冒頭近くの授業シーンで登場する「誰(た)そ彼と われを名問ひそ 九月(ながつき)の 露に濡れつつ 君待つわれを」(『万葉集』 10巻2240番)は女性視点の和歌です。「“あれは誰?”とわたしの名前を聞かないでください。9月の露に濡れながら愛しいあなた(男性)を待つわたしのことを」という内容。

・また万葉集において、上記の歌の次に並べられた歌は「秋の夜の 霧立ちわたりおほほしく 夢にぞ見つる 妹(いも)が姿を(秋の夜に霧が立ちのぼってぼんやりしているような、おぼろげな夢を見ました。愛しいあのひと(女性)の姿を)」です。こちらは男性視点。いろいろ示唆的ですねー。

 

・主人公の2人が直接には出会っていないのに惹かれ合うためには、2人が周囲に愛されている必要があったんですね。入れ替わっているあいだ、2人は周囲の人間や環境を通して、それぞれが「どんな人間か」を深く知っていくわけです。

・時に人は、自分が自分をどう思っているかよりも、人が自分をどう扱うかによって、より直接的に自分を知るものですね。

・主人公の一人、瀧くんが描く絵は「街や風景」ばかりで「人物」は描こうとしません。おそらく彼は街並みや風景が好きで(糸守の美しい風景に見惚れるシーンがある)、就職時に建築会社ばかり狙う(たぶん建築デザイナー志望)という設定につながっていくんですね。これは本作でキャラクターデザインを田中将賀氏に任せて、自身は背景画の作り込みに徹した新海監督自身もモチーフになっているのではないでしょうか。

・チラッと映る三葉さんの父の職歴は「民俗学者→神主→町長」。伝承(彗星の落下や「片割れどき」などの特徴的な方言)を調べに糸守町にやってきたのではないか。そこで三葉さんの母親(伝承の中心地である宮水神社の娘)と出会って結婚した(養子に入った)と。

・作中でも触れられたように、お祖母さんもお母さんも「入れ替わり」の経験者なのですね。だからこそ作中でお祖母さんと(義母や妻から何か聞いていた)父親だけが、「目の前の娘が別人と入れ替わっている」ということに気づくし、父は最後に(入れ替わっていない)三葉さんの説得に応じる。

 

・物語上の「入れ替わりの力」は三葉さん側(巫女側)だけが持っている(瀧くん側には特に異能の力は必要ない)という設定で成立可能。これはパラドックスになるが、電車の中で出会った2013年の瀧くんに「組紐」を渡すことでマーキングが完了したと考えられる。瀧くんと三葉さんの双方で「赤い組紐」を持つことが「入れ替わり」の発動条件のひとつか。

・お祖母さんも組紐で髪をまとめてましたね。

・2回目見るときに母親も赤い組紐を身に付けていたか確認したい。

・なんかスゲーたくさんメモ書いてるなぁ。わかりやすくてストレートなのに、それでも何か書きたくなる作品ってすばらしいですよね。

・「繭五郎の大火」、何か大きな意味がありそうな気がして気になってたんですが、特に見つけらませんでした。ぐぬぬ。古文書には隕石落下と「入れ替わりの力」のことが書かれていたんでしょうか。

 

・彗星(地球に近づくたびに二つに割れて片割れが激突する)も、組紐も、「出会い直し」の暗喩か。

・糸守で3年の時空間を超えて瀧くんと三葉さんが出会う時に、クレーターの周縁を走って回ってそこで会うのは、彗星と、古事記イザナミイザナギの国生み神話がモチーフ?(古事記によれば、二人で社の周りを回って出会い直して国産みする)やや強引な解釈か?

・この出会い直しが夕方、つまり「黄昏時」に起こると。

・なので日が落ちて夜になるとチャネリングが強制終了するということですね。

・奥寺先輩がいいぞー。作中では「大人」という設定なのにやや不安定なところが特にいいです。

・途中、勅使河原家の町長接待シーンで、隣室にいる勅使河原克彦くんが「腐敗の匂いがする」とつぶやきます。これは、三葉さんのかなり破滅的で犯罪的な避難作戦に勅使河原くんがすすんで協力する伏線なんですね。このまま田舎町で暮らしていく自分、町長にお酌し選挙協力を約束する父親の姿を自分に重ね、「このままああなっていいのか…」という葛藤が彼に犯罪的な避難計画へ踏み切らせる契機となったと。ああモラトリアム。

・勅使河原克彦くんは「葛藤を抱えているほうの男子」という役割があるんでしょうね。

・物語序盤、三葉さんは2013年の住人なのに2016年のスマホが楽々使えるあたりにやや違和感……と思ったんだけど、調べたら2013年ってiPhone5が出て1年くらいたってるんですね。なら使えるなー。案外進歩してないなスマホ

・誰もが「夢って起きたら忘れちゃうよね」だとか、「もしかしたら自分にも、出会った記憶をなくしただけの運命の相手がいるかもしれない」だとか、身近に感じられるテーマが盛り込まれている。

 

・新海監督自身が「本作のモチーフにした」と語る、小野小町の「思ひつつ 寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせばさめざらましを(愛しい人を思いながら眠りについたからだろうか、あの人が現れた夢を、夢だとわかっていれば目覚めたくなかったのに)」は古今和歌集に採られていますが、その古今集で上記の歌の次に並べられた小野小町の歌は「うたたねに 恋しき人を見てしより 夢てふものは頼みそめてき(ふいに落ちたうたた寝に恋しい人が出てきてしまい、それ以来はかない夢を頼るようになってしまった)」というものです。こちらも示唆的ですねーー。

 

・新海監督の前作『言の葉の庭』(2013年)でも万葉集の一首(とその返歌)がとても印象的に使われていましたね。返歌や類歌は和歌の広がり、深まりを担う醍醐味のひとつですな。

 

・立川シネシティの極上音響上映で見たせいか、音楽が最高。映画館を出てすぐサントラを購入しました。iTunesなら1900円。安っ! 主題歌4曲とも歌入りで入ってます。

・イヤホンで聴きながらこれ書いてます。最高。

・聴いてていま気づいた。曲順が物語順と沿っているため最初から順番に聴いてると映画を追体験できますな!

・失礼を承知で、エンドロールまでずっと主題歌を歌ってるのはBUMP OF CHIKENだと思ってました。ごめんなさい。

・しかしまあ…新海監督がどこかのインタビューで「震災の影響は大きい」と語っていたけども、東日本大震災以降、「突然襲ってくる天災で町民が全滅」というような異常で異様な事態が、私たちにとってリアリティを持って感じられるようになってしまったんだよなあ。

・そう考えると、私たちは「あの大災害」をリアリティを持って、それでも物語として消費できる段階に入っている、ということなのかもしれない(初代『君の名は』が東京大空襲を物語として消費できるようになった時期の作品だということも合わせて)。

・ともあれ『秒速5センチメートル』ファンによる、奥寺先輩が去っていくシーンでの「またか? またなのか?」感。

・それでも奥寺先輩がいいです。

・立川シネシティ極上音響上映万歳。

・本作全力推しです。私もまた見ます。ありがとう! とにかくありがとう!!

・本作を「見たほうがいいですよ」と薦めてくださった方々に感謝。

・この作品を気に入った方は、『時をかける少女』(細田守監督・2006年)もぜひ。似たテーマ、似たモチーフ、似た疾走感を、違うシナリオで楽しめます。

・いい映画は「また映画見たいな」って思わせてくれますよね。そうして未来へ「好奇心」を手渡していく力がある。

 

・本記事をアップロードしおえて2日後に寝ながら『君の名を。』を反芻していてハッと気づきました。瀧くんと三葉さんには「(少なくとも17歳時点で)母親がいない」という共通点があるんですね。これは視聴中は気づかなかったなー。

 

・「同じものを持っている」よりも「同じ欠落を抱えている」というほうが共感や連帯感を得やすい……というのは誰が書いてたんでしたっけ。ともあれこれは製作サイドが狙った「二人が短期間で恋に落ちても不自然ではない仕掛け」の一つなんでしょうねー。瀧くんのお母さんは離別なのか死別なのか、気になるところです。

 

・女しかいない宮水家と男所帯の立花家で入れ替わった新鮮さなんかも、二人のドキドキ感をドライブしたんだろうなぁ。

 

以上。

 

君の名は。』公式 http://www.kiminona.com/index.html

 

立川シネマシティ https://cinemacity.co.jp